2006年05月18日
歯科矯正治療とは
歯科矯正治療とは
歯並びの矯正治療というと、とかく、その審美的な側面ばかりが強調されがちですが、最近では、日本でも、歯並びを健康の一部として考える人がふえてきました。よい歯並びは、見た目にきれいに並んでいるだけでなく、正しい噛み合わせとスムーズなあごの動き、口もとのバランスによって支えられています。つまり、形の美しさは、咀嚼、発音、呼吸、体幹バランスなどの機能と表裏一体の関係にあるのです。その意味で、歯科矯正治療は健康医学、スポーツ医学のたいせつな一領域を担うものであるといえます。
日本人と歯並び
国民の知的、経済的、文化的レベルでは諸外国に引けをとらないのに、日本人の歯や歯並びに対する無関心はどこからきているのでしょうか。恐らく、単一の文化、言語を有する日本民族は、八重歯などのアンバランスを可愛いとするように、美しさを乱すポイントにユーモアのセンスを交える独特の価値観があるように思います。
しかし、初めて来日したアメリカやヨーロッパの人たちが、通勤電車に乗って、まず、驚くことが、瀟洒な服に身を包み、ブランド品のバッグを持つ多くの日本人が自分の歯や歯並びの悪さに無頓着だという事実であり、このことは一種のカルチャーショックであることをよく耳にします。
日本人には、乱ぐい歯や出っ歯、受け口など、歯並びや口もとのアンバランスで損をしている人が多いのは、残念なことです。口もとの印象は、顔全体のイメージに直結していることを知ってください。正面だけではありません、歯並びや口もとの欠点は、横顔のラインに、正直に出てしまうことが多いのです。歯並びと横顔、自信ありますか。
矯正治療にはどんな装置を使うのか
矯正治療には、一般的に歯に直接接着するブレースと呼ばれる装置をはじめ、症状に応じてさまざまな器具を装着しますが、それらの中には、取り外し可能なものから、口の中だけでなく、あごの骨格を矯正するために、口の外につけるものもあります。「矯正はしたいけど、口をあけたとき、装置が見えるのが恥ずかしい」。だれでもこう思うに違いありません。しかし、一生、今の悪い歯並びのままであきらめるのかどうか、よく考えてみましょう。装置がはいるのは人生の一時期にすぎません。すばらしい結果を考えれば、がまんをしてみる気になるはずです。
スポーツや楽器は大丈夫?
日常の生活では、とくにしてはいけないというものはありません。スポーツについても、ふつうにやってください。よく心配されるのは、テニス、サッカーやバスケットボールなどのボールゲームです。矯正装置を付けていてボールや人とぶつかったりすると、ケガをするのではないかと質問されることがあります。しかし、装置をしているために、ケガをするというようなことはありません。むしろ、激しくぶつかっても、装置が添え木の役目をして、歯が抜けずにすんだという人もあるくらいですから、安心してください。
ただし、柔道の寝技やラグビーなど、どうしても口もとを強くぶつけやすいコンタクト・スポーツでは、衝突によって装置がこわれる心配があります。したがって、激しいスポーツをする人の場合は、とくべつに、やわらかいマウスピース(スポーツガード)をつくることもあります。
また、最近はブラスバンドなど、楽器を趣味とする人もふえてきました。吹奏楽器は、装置を付けると、多少音がでにくくなることがあります。とくに、トランペットなどの高音楽器では、慣れるまでに時間がかかります。しかし、ほとんどの場合、練習するうちに慣れてくると思います。なお、歯並びの状態によっては、治療の妨げになる楽器もありますので、事前によく矯正歯科の先生と相談してください。
次回は治療を始める前の診断についての話です。